稽古場でリボンを使う高田茜さん
『リーズの結婚』のリハーサル ©2025 RBO. Photographed by Andrej Uspenski
世界三大バレエ団の一つ、英国ロイヤル・バレエ団が2026年7月に、3年ぶりの来日公演を行う。世界的なスターが勢ぞろいで登場する中でも、一際注目を集めるのは、プリンシパルとして充実の時期を迎える高田茜さん。たおやかで気品に満ちた雰囲気をまといながら、強靭な体幹を使った超絶技巧を、さらっと見せて、極上の舞台を作り上げる。「日本が大好きで、日本で踊る機会を大切にしている」という高田さんに、公演に向けた心意気を聞いた。
(取材・文:ジャーナリスト 清野由美)

ハッピーな『リーズの結婚』と悲劇の『ジゼル』

―― 2026年7月の公演では『リーズの結婚』『ジゼル』という英国ロイヤルならではのラインナップ。『リーズの結婚』は、イギリスの田園を舞台にした、ひたすら明るく、楽しい演目ですが、一方で『ジゼル』は村娘のジゼルの哀しい愛の運命を、幽玄の世界に描き出すクラシックの精髄です。両作品の主役を演じる高田さんは、それぞれ、どのような解釈で臨まれるでしょうか。 

高田茜さん(以下、高田):『リーズの結婚』は、1960年代に芸術監督を務めたフレデリック・アシュトンによる、古きよき英国ロイヤルスタイルの代表作です。イギリスの田園を背景に、コミカルなドタバタあり、ダンサーたちがカラフルなリボンを編み上げていく名場面ありで、笑顔の絶えない作品です。ロイヤルの看板作品として、みんなに愛されてきましたが、この10年ほどは上演がなく、久しぶりの公演になります。私もすごく楽しみにしているところです。 

―― 温かく、コミカルな演目ということで、高田さんご自身もリラックスして踊れますか。 

高田:ハッピーな2幕ものですが、実は技術的にすごく難しい作品で、終わったらもう、どっと椅子にへたりこんでしまうくらいなんです。リーズという裕福な農園の一人娘が、恋人のコーラスと結婚するまでの物語ですが、アシュトンの振り付けは、役の気持ちを表すために、上体を大きく使って動かすところが特徴です。テクニックの下支えが、すごく大事なのですが、観客のみなさまには、もちろんその大変さを見せてはいけない。そこに、アシュトン作品の魅力と、難しさがありますね。 

―― もう一つの『ジゼル』は、田園の陽気な人間模様とは対極の悲劇で、特に2幕目、白いロマンチック・チュチュをまとったダンサーが幽界で踊るシーンは、静謐な哀しみに満ちたクラシックの王道です。 

高田:ピーター・ライトが演出したロイヤル版の『ジゼル』は、1幕の最後、ジゼルの死の場面が、恋人の裏切りを知って、みずから胸に剣を刺すような、激しいものになっています。ですから、よりドラマ性が強まるといいますか。 

―― もともと病弱だったジゼルが、裏切りにあって、そのショックで心臓が止まってしまう、という演出が多い中、ロイヤル版はよりショッキングな場面が1幕の最後に来るのですね。 

高田:1幕の村祭りから一転して、2幕はバレエ・ブラン(白いバレエ)といわれる、クラシックバレエの正統で、純粋な美しさをお見せする場面になります。ロイヤル版では悲劇性が強まった分、2幕の霊的な世界の静けさがきわまって、ロイヤルならではの演劇性が強く表現されていると思います。その世界観を壊さないように、私もジゼルを丁寧に演じたいと思っています。