彫刻家・舟越保武の長女、舟越桂、直木の姉として芸術一家に生まれた末盛千枝子さん。絵本編集者を経て、すえもりブックスを設立。たくさんの絵本や、上皇后美智子さまの本などを出版してきました。そして84歳の今、東京から移住した、岩手山を望む家にひとりで暮らしています。そんな末盛さんが歳を重ねてわかったこととは――?大切にしている時間や習慣などを綴った著書『今だからわかること 84歳になって』より、一部を抜粋して紹介します。
3.11絵本プロジェクトいわて
「母さん、もし何かやるんだったら、絵本だろう」。次男の春彦のこのひと言に背中を押されて、スタートしたのが「3.11絵本プロジェクトいわて」でした。
2010年5月に八幡平に越してきて、わずか10カ月後に起こった東日本大震災。未曾有の災禍の中で、家を流されたり親を亡くしたりした子どもたちの、それでも見せる彼らの健気さ。
私は、幼くして父親を亡くした息子たちの姿に重ねないではいられず、あなたたちのことを思っているよ、と力づけようとした、その手段が絵本でした。
私はこれまで、IBBY(国際児童図書評議会)の活動を通して、災害に遭ったり肉親を失ったりした子どもたちが、誰かが寄り添って絵本を読んでくれる時だけは、穏やかな気持ちを取り戻せることを知っていました。
その経験からすぐに、被災地の子どもたちへ絵本を送る活動を盛岡市中央公民館に提案し、即断を得て、そこからプロジェクトが一気に動き出しました。
国内外から次々と届く絵本の段ボール箱を、大勢のボランティアの人たちが開梱、仕分けし、春彦が考案した「えほんカー」6台が絵本を積んで被災地を走り回りました。