英文学のみならず、思考、日本語論などさまざまな分野で活躍されてきた、評論家、エッセイストの外山滋比古さん。著書には、およそ40年にわたりベストセラーとして読み継がれている『新版 思考の整理学』などがあり、2020年7月30日に96歳で逝去されました。そこで今回は、外山さんの著書『乱読・乱談のセレンディピティ』から一部を抜粋し、外山さんの「思いがけないことを発見するための読書術」をお届けします。
風のごとく……
「10分間で1冊読みあげる法」を教えるなどという広告をときどき目にする。マに受ける人もあるらしいが、多少とも本を読むのに苦労した人間はハナもかけない。そんなに速く読めるものかと反発する。そんなに速く読めるようなのは読むにあたいする本ではないと遅読派は考える。
人さまざまで速く読むのもあれば、ゆっくりと読む人もある。一般に、じっくりゆっくり読む方がいいように考える。速く読むのは雑になりやすい。きめ細かなところは読みとることができない。10分間で1冊読み上げるのは電光石火の早業、意味などとれない。カタツムリのような読み方が高級だと思っている人が少なくない。
学校教育は本の読み方など教えてくれないから、学校出が読書についてエラそうな口をきく資格はない。本らしい本を読まないでも高等教育を修了することができるのである。
声を出して読むことが流行のようになっているが、考えてみると、音読のすすめは、適度の速さで読めということである。黙読だとスピードが大きくなる。目は光の速さで読む。光のスピードはきわめて大きい。