(写真提供:Photo AC)
1972年に「魔法の黄色い靴」でデビューし、「心の旅」「青春の影」「虹とスニーカーの頃」などのヒット曲を生み出したミュージシャン・財津和夫さん。財津さんが所属するバンド「チューリップ」は、2027年に55周年を迎えます。そこで今回は、財津さん初の自伝『大丈夫さ 私の履歴書』より一部を抜粋し、財津さんの言葉をお届けします。

これから

数年前、ふと長谷川町子さんの漫画「いじわるばあさん」を手に取って、これこそ自分だと思った。老人は自由なのだ。もはや失うものはない。倫理や道徳に縛られる必要もない。悪態もつけばいいし、人の悪口も言おう。

病気になって死を意識したとき、少し聖人に近づいた気がした。だが退院して3日もたつと、以前に増して俗人になった。

なぜかこれこそが成長だという確信があった。これまで、成長は自分を高めることだと思っていたけれど、きれい事だった。今の自分は強い。怖いものがない。

いじわるばあさんも時に弱気になる。私も自分が丸くなったと感じる。でもそれはボールムシ(子供の頃ダンゴムシをこう呼んだ)のように、自分を守る丸さだ。体力がないからケンカしても勝てない。だから丸くなるのだが、悪態を内に秘めているのだ。