環境省によると、2025年度の全国のクマによる被害者数は、過去最大を上回ったそうです。そんな中で「野生のクマに3000回以上遭遇し、9回襲われたことがある」という日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦さんは「クマの知られざる素顔に触れてもらいたい」と語ります。そこで今回は米田さんの著書『家に帰ったらクマがいた』より一部を抜粋し、米田さんが見た「クマのありのままでほんとうの姿」をお届けします。
胸に半月模様がある
この写真のクマを日本ではツキノワグマ(月の輪熊)と呼ぶ。同属亜種のクマはアジア大陸にも生息していて韓国では半月胸熊、中国では黒熊と呼ぶ。
2004年4月10日、私のクマ観察スタイル(写真提供:米田一彦)
上の写真では軽装だが、普段はヘルメット、クマ撃退スプレー、毒ヘビ・ハチ類用の救急用品など、かなりの重装備だ。クマに突然襲われないように、背中側には各種の仕掛けを設置してある。
このカメラは、初めて入手したレンズ交換ができないデジカメだったが高価で、まだフィルムカメラを多用していた。
ブナ林にある水平のけもの道に座っているので、右手から来るクマが3メートル近くまで来て、私に気がついてUターンすることがある。このシンプルなスタイルなのに襲撃されなかったのは、広島のクマの気性が穏やかだったからだと思う。私のクマ追い人生の後半で、ここに来られたことは幸運だった。