岩風呂に入っているように見える(写真提供:米田一彦)
環境省によると、2025年度の全国のクマによる被害者数は、過去最大を上回ったそうです。そんな中で「野生のクマに3000回以上遭遇し、9回襲われたことがある」という日本ツキノワグマ研究所所長の米田一彦さんは「クマの知られざる素顔に触れてもらいたい」と語ります。そこで今回は米田さんの著書『家に帰ったらクマがいた』より一部を抜粋し、米田さんが見た「クマのありのままでほんとうの姿」をお届けします。

岩風呂を堪能

「広島は暑いけえね、来ないほうがエエ」と私より先に広島に流れてきていた従兄が言っていたが、1990年代、広島県は12カ所もスキー場があるほどの雪国だった。スキー場はブナ林内に設置され、そこにはクマがいたので私が定住することになった。

私は標高850メートルの場所に定住しているが、近くの標高900メートルの所に2軒定住者がいるし、恐羅漢スキー場は若干高そうだが、私は中国五県では十指に入る高所定住者のはずだ。ここは夏は暑くて冬は寒く、雪は最高で車のジムニーの屋根まで積もる。私は20年ほど前はブルドーザーとユンボを操作して雪と戦っていたが、いまは業者に委託している。

それで写真のクマは何をしているのかというと、岩風呂のような所で水に浸かっていたのである。暑さで火照った体を冷やそうと、岩のテーブルに右手を乗せて両足を折り、下半身浴をしていたのだ。それからじっと10分も動かなかった。

有名な温泉地のテレビCMみたいだが、入浴しているのが黒毛のケモノなのは興ざめだろう。

ここより500メートルほど上流にも岩風呂があって、黒クマとオオサンショウウオが“混浴”している。私は広島に来るまで、オオサンショウウオを見たことがなかった。橋の上から見て「ここらの人は、この大ナマズを捕らんのかい」と驚いたものだ。