(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
6月は、LGBTQ+の権利を啓発する活動・イベントが世界各地で実施される「プライド月間」です。認定NPO法人ReBitが行った「LGBTQ子ども・若者調査2025」によると、中高生の約9割が「学校で困難やハラスメントを経験した」と回答したそう。そのような中、出生時の性に違和感を抱く「性別違和」の状態にある子を持つ小児科医の松永正訓さんは「現在も光(仮名)は多くの生きづらさを抱えている。でもその中で自分にしかできないことを見つけ、生きるための基盤を作ろうとしている」と語ります。そこで今回は松永さんの著書『性別違和に生まれて-父と子で綴った23年』より一部を抜粋してお届けします。

生きづらい小学校生活

子どもである光は背が伸びるのが早かった。小学3年生のときにはクラスで一番背が高かった。私は自分の子どもが、背が高くても低くてもどちらでもよかったが、早く背が伸びると最終的には第二次性徴も早く、身長も伸び止まるだろうと予測していた。

私のPCには7000枚を超える写真が保管されている。家族の写真もあれば、仕事で使った写真もある。その中に小学3年生の夏の光の写真がある。スカートを穿いて、自転車にまたがって。でもこれが、光が見せた最後のスカート姿である。その頃、背中まであった髪を切り、ショートヘアになった。女子と遊ぶより男子の友だちが多いと妻から聞いていた。光は「男まさり」の女の子だった。

小学3年生の終わりに第二次性徴が訪れた。光はまだ9歳。私はそのことについてあまり関わっていない。男親にはそういうことがよく分からない。妻が光の面倒をみてくれていた。妻からは、光が月経の出血をものすごく嫌がっていると聞いた。それは当然だろうなというのが私の気持ちである。学校の小学3年生が使うトイレには汚物入れがなかった。妻は学校に申し入れて、用意してもらった。

ひと月経ち、またひと月が経つ。やがて月経の前になると、光は気分の不快を訴えるようになった。「気分が悪い」「イライラする」「落ち着かない」「学校に行きたくない」。これって誰にでも起きることなのか、私にはまったく分からない。妻は困惑した顔で「これってPMS(月経前症候群)じゃない?」と聞いてきた。

PMSとは月経前に現れる精神的・身体的な不調の総称である。イライラや不安、抑うつ、気分の落ち込み、集中力の低下などの精神症状が出る。また、乳房の痛みと張りや、下腹部の痛みと張り、頭痛、むくみ、肌荒れなどの身体症状が出る。月経開始とともに自然に軽快・消失するのが特徴となる。主な原因は女性ホルモンの変動であり、症状が重い場合は、PMDD(月経前不快気分障害)という診断名になる。

もしそうであれば、どう対応すればいいのか。これは専門家に任せるしかない。女性の性の悩みならば、国立病院機構千葉医療センターに婦人科の女性医師が行っている性カウンセリングがある。私は手紙を書き、妻の付き添いで光を受診させた。