厚生労働省の「認知症及び軽度認知障害(MCI)の高齢者数と有病率の将来推計」によると、令和4年度の調査では、65歳以上の高齢者における認知症有病率は約12%と推計されたそうです。そんな中で「認知症になったからといって、その人の心まで失われるわけではない」と語るのは認知症医療の第一線に立ち続けてきた認知症専門医・繁田雅弘先生です。そこで今回は繁田先生の著書『認知症になって幸せな人、不幸せな人』より一部を抜粋し、優しく、大らかな認知症との「付き合い方」をお届けします。
たった1時間でいい。一緒に、お茶すればよかった
会いに行けないわけじゃなかった
「週末、数時間なら、会いに行けないわけじゃなかったと思う」と、悔しそうに語る家族がいました。
私にも覚えがあります。
数時間でも、母に会いに行くことはできたはずです。
でもつい、「介護の制度がどうの」ということばかり考えてしまう。
ほんの数時間でもいいから、買ったお弁当を一緒に食べるとか、ファミリーレストランに連れ出すとか、そんなことでもよかったと思うのです。
普段、親子で「お母さん、お父さん、今、どんな気持ち?」なんていう会話をすることはないでしょう。「用件ばかり」が普通です。
でもよく考えたら、70年、80年と生きてきた「その人」について、もっと話を聞いておけばよかったと思うのです。
アルツハイマー型認知症がかなり進行しても、遠隔記憶(遠い昔の記憶)のエピソードは保たれていることが多いです。
とくに、繰り返し想起した記憶ほど保たれると考えられています。
医学的にも、認知症の方との会話を楽しむには、昔のことを話題にするとよいとされています。リハビリテーションも同様です。