歌手、俳優の美輪明宏さんがみなさんの心を照らす、とっておきのメッセージと書をお贈りする『婦人公論』に好評連載中「美輪明宏のごきげんレッスン」。8月号の書は「気魂」です。
※去る6月20日、美輪明宏さんが91歳で逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。生前にいただいていた原稿を掲載します。
※去る6月20日、美輪明宏さんが91歳で逝去されました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。生前にいただいていた原稿を掲載します。
戦争なんてあってはならない
今年も8月が近づいてきました。81年前の8月9日、長崎の実家で宿題の絵のできあがりを確かめようと立ち上がったとたん、ピカッと目がくらむような白い光が走り、一瞬シーンとした後にドーン!
凄まじい地響きとともに窓ガラスが飛び散り、瓦が降ってきました。防空壕へ行こうと外に出ると、まさに地獄絵図。原爆の熱線でおびただしい無辜の命が失われたのです。
戦後、15歳で国立音楽高等学校に進学するために上京し、歌手デビュー後に仕事で長崎に向かう道中のこと。列車の中で知り合った長崎出身の青年は、原爆で両親もきょうだいもみな亡くなったと言います。彼が家族の遺骨を探したいと言うので、一緒に彼の実家に向かうことに。私たちは家も何もかもなくなっていたその場所に、無言で立ち尽くしました。
私の友人も、爆風からは逃れたものの放射能のせいで何人も亡くなりました。こんな理不尽なことが許されていいのか。戦争なんてあってはならない、こんな仕打ちに負けるものか!と、唇を噛んだのでした。

