『かもめ食堂』『れんげ荘』などで人気のエッセイスト・群ようこさん。70代になった群さんが、家が嫌だった子どもの頃、転職を繰り返した若い頃など、これまでの人生を振り返った著書『この家に生まれたことが失敗だった?』より、一部を抜粋して紹介します。今回は、勤めていた本の雑誌社を退社し、フリーランスとして活動し始めた頃――。
今から思えばアナログな方法で
私が恵まれていたのは、本の雑誌社に勤めていたとき、椎名さんから預かった原稿を、取りに来ていた編集者の方々と、面識があったことだった。
椎名さんと同じ方が担当してくださったり、部下の方を紹介してくださったりした。ゼロから会う方もいたけれど、ほとんどが面識がある方ばかりだったので、何となくその人となりもわかっていて、それもあまり緊張しなかった理由だった。
某出版社の当時、出版部長の方からは、
「あなたはこれまでの人生では苦労してきたかもしれないが、仕事に関してはまったく苦労していませんからね」
といわれたのだが、たしかにその通りだった。最初から大手の出版社で書き下ろし、連載がはじまり、取材の仕事も4ページが割かれていた。私自身は、編集者から、
「このような企画なので、この枚数でお願いします」
と依頼されたのを、
「はい、そうですか」
とお引き受けしただけで、そこにはそれ以外の何もなかった。