
4,000匹以上のぬいぐるみと暮らす小説家・新井素子さんの日常がここに。「ぬい活」が一般化するはるか以前、「ぬい」という呼称を生み出し、社会からずっと変人扱いされてきた新井さん。「ぬいぐるみは生きている」と本気で確信し育んだ「ぬい」たちとの生活には、ただごとではない発見と幸せのヒントが詰まっていました。
猪一族の歴史は、〝わに〞から始まる。
随分前なんですが。うちには、〝いもしし〞って名前の猪のぬいがやってきました。この子は、たすき掛けにしてポシェットを持ち、そのポシェットと同時に、サツマイモを持っていた猪でした。(だから、いのしし、じゃなくて、〝いもしし〞゛ね。芋のお弁当持っていた子だったから。)
そして、この後、普通の猪ぬいがうちに来て、この子の名前は、〝しし次郎〞。(〝いもしし〞の弟っていうことで。)
この年は、干支でいうと猪年でした。だから、なんか、イベントがある度に私は猪ぬいをいただいてしまって……その子達の名前が、〝しし三津子〞〝しし四郎〞〝しし五都子〞〝しし六郎〞、〝しし七子〞。
この辺に来ると、猪達は、変な野望を抱いてしまいました。
……ここまで。ここまで来たのなら……目指し、たい?……目指してもいいかな、〝しし十六〞。
いやあ、〝しし〞ですから。
四々っていったら……〝ししじゅうろく〞ですよね。
そして。こんな変なことを猪一族が思ってしまったのは……わにのせいです。
