日本の秘密組織「別班」は実在するのか?
日本はしばしば、「本格的な対外情報機関を持たない珍しい国」と評される。
CIAやMI6のように、海外でエージェントをリクルートし、秘密工作や亡命支援まで担う組織を公式には保有していないからだ。外交官や防衛駐在官による情報収集は行なわれているものの、その多くは外交活動の延長線上にある。
そんな日本でスパイへの関心を一気に高めたのが、2023年のドラマ『VIVANT』だった。陸上自衛隊の秘密情報部隊「別班」の存在が描かれたことで、「日本にも本物のスパイ組織があるのか」という議論が再燃したのである(ただし政府は、「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」という組織は、過去にも現在にも存在しないとの公式見解を示している)。
そもそも、別班の存在を一躍世に知らしめた大きなきっかけは、2013年の共同通信による調査報道だった。その取材をまとめ、2018年に刊行されたのが、『自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体』である。
同書によれば、別班は旧陸上自衛隊小平学校で行なわれていた「心理戦防護課程」に関係する極秘部隊だとされる。
興味深いのは、その名称だ。「心理戦防護課程」という名前からは防御的な教育を想像するが、敵の心理工作を防ぐには、その手法を深く理解しなければならない。防御と攻撃は、常に表裏一体なのである。
この課程については、自衛隊内部でも強い秘匿性が保たれており、教育内容は限られた関係者しか知らないとされる。学校長ですら詳細を把握していないという証言も紹介されており、その真偽はともかく、神秘性を高める一因となっている。
また、同課程の名称は過去の公開資料で確認されたと報じられる一方、現在は情報学校のホームページ自体が外部からはアクセスできなくなったことも、さまざまな憶測を呼んでいる。