(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
2027年放送予定のNHK大河ドラマ第66作は、『逆賊の幕臣』です。松坂桃李さん演じる主人公・小栗上野介は「江戸幕府の末期を中枢で支えた幕臣」とされますが、名前を聞いたことはあっても、どんな生涯を送った人物なのかよく分からないという方もいらっしゃるのではないでしょうか。幕末維新期が専門の塚越俊志先生は「小栗の生涯を振り返ることによって、日本の近代化の原点が見出せる」と語ります。そこで今回は塚越先生の著書『小栗上野介-「逆賊」とされた開明派幕臣』より一部を抜粋し、小栗上野介の「幕府の命運に殉じた42年の生涯」をお届けします。

メア・アイランドでの咸臨丸の修理

1860年3月30日(安政7年3月9日)、外国方御用達としてポーハタン号に乗船した杵築藩士佐藤秀長は、メア・アイランド海軍造船所で咸臨丸が修理を受けている情報を聞きつけ、早速、勝海舟に会いに行っている。佐藤は勝の氷解塾に入塾していた。翌日、海軍造船所を見学し、「煉瓦石を以て造営せる高大なる家五六ケ所あるを悉(ことごと)く過りて是る見るに凡而(すべて)海軍一切の器械を製し、及(および)蒸気の機関を以て銅鉄の器を鍛錬する等の所にして其巧便(そのこうべん)言尽しがたし」(「米行日記」)と記している。

小栗上野介忠順の従者木村鉄太は、メア・アイランド海軍造船所を「是船ヲ修理シ、且(かつ)薪水ヲ取(とらん)ト欲シテ也」(「航米記」)と、船の修理と薪水補給の場と記している。また、木村によると、メア・アイランド海軍造船所のある場所は10年前までは人がおらず、金鉱が見つかってのち海軍造船所が造られるようになった(「航米記」)と記している。

アメリカは1853年に約3.9平方キロメートルに及ぶこの土地を購入し、1854年9月にファラガット海軍中佐の指揮のもと、メア・アイランド海軍造船所で船舶建造が始まった。さらに、木村はこの海軍造船所について次のように記している。

引用すると「舟ヲ造リ、兵器ヲ制シ、煤炭(いしずみ)ヲ貯ヘ、兵ヲ育(やしな)フ、海軍提督、皆之ヲ司ル、若(も)シ港ニ事有レバ、出テ戦ントス、河浜船ヲ修理スル処アリ、伐木ヲ層(かさ)ネ、二つノ井楼(せいろう)ヲ設ク、中間ヲ入ルべシ、若船底補輳(つくろわ)ンニハ、左右井楼ヨリ、車縄(しゃち)ヲ以テ、水上ニ釣リ、吃水所(きっすいしょ)ヲ現ス、又許多(あまた)ノ武庫アリ、或ハ蒸気ノ力ヲ借テ、鉄具ヲ制ス」(「航米記」)としている。海軍造船所の性質がただの造船施設ではないことがうかがえる。