右から松任谷正隆さん、ジェーン・スーさん(撮影:木村直軌)
音楽プロデューサーの松任谷正隆さん、69歳。コラムニストのジェーン・スーさん、47歳。ほぼ初対面の2人が中年以降の生き方を語り合ってみたら、「男と女では見えている世界が違う」という話に転がって──(構成=山田真理 撮影=木村直軌)

いつから「おじさん」?「おじいさん」?

松任谷 「初めまして」じゃないんですよね……?

スー 8年前に、松任谷さんのラジオ番組に呼んでいただいたことがあります。松任谷さんは、オレンジのシャーベットカラーのセーターを着ていらっしゃいました。「また呼んでもらえた!」とウキウキして来たら、忘れられていたなんて。(笑)

松任谷 次は絶対に大丈夫です!

スー いえいえ、「8年後に絶対また呼んでもらうぞ!」というモチベーションになりましたから。松任谷さんはエッセイで、「人の顔と名前を覚えられない」と書いていらっしゃいましたけれど……。

松任谷 このところ、ひどくなってますね。誰とも会わずに、引きこもりたいくらい。

スー 年齢的なものですか? おじさんになったからというか。

松任谷 僕には「30歳からがおじさん」「60歳からがおじいさん」という認識があるので、年齢的にはすでにおじいさん。だから逆に「おじさん」と呼ばれたら嬉しいかもしれない。

スー いつからそう考えていらっしゃるんでしょう。

松任谷 10代から、そう思ってたんじゃないかな。あの時代は、30歳を「おにいさん」と呼ぶ雰囲気ではなかったし、ジーンズも──僕の世代はジーパンと言っていたけれど、大学を卒業したら穿(は)けないものだと思っていて。だから30歳になるのが異常に嫌だったのを覚えています。