厚生労働省の推計によると、2012年に認知症の人の数は約462万人でしたが、2025年には約700万人を超え、65 歳以上高齢者の約20%が認知症と見込まれるようになりました。身近な人が認知症になったとき、対応できるのでしょうか。2008年、シングル女性7人が集まって始めた「友だち近居」グループ、「個個セブン」。スタートから13年あまり、年を重ねるにつれて、認知症、介護、後見人問題などに直面。高齢のおひとりさま同士、どう助け合えばいいのか――。若く元気な頃には想像できなかった〈友だち近居と老い〉に向き合った仲間との日々を、最年少メンバー(74歳)の筆者が綴ってくれました。
想定外のこと、葛藤したこと
最初に「あれっ」と思ったのは、2015年12月のことだ。
私たちは毎年、親しい人たち20人ほどを招いて会費制のクリスマス交流会を開いている。
サンドイッチやケーキなどを用意してゲームやおしゃべりを楽しみ、最後にみんなで「きよしこの夜」を歌ってお開きとなる。
私たちメンバーが分担して準備にあたるが、サラダ係の仲間が材料を買っていないことが当日に判明。「引き受けた覚えがない」と言うので、あわてて近くのスーパーに走り、事なきを得た。
また本好きの私たちは本を貸し借りしているが、だんだん彼女から本が返ってこなくなり、彼女は「借りた記憶がない」と言う。そんなことが重なった。
私は新聞社で40年近く記者として働いてきた。退職前の10年は、高齢者と少子高齢社会をめぐる問題を担当して記事を書き、認知症の当事者や家族、専門家らに取材する機会が幾度もあった。
その経験をふまえて彼女の様子が少しおかしくないかと、仲間たちにおずおずと聞いたところ、「実は」とみんな話し始めた。
「約束の日時を間違えたが時計の故障のせいにした」「何度も会っている人を別人と間違えた」「印象深い半年前の出来事を覚えていない」……。