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数多くの時代劇で斬られ役を中心に活躍してきた俳優の福本清三さん。「日給250円、危険手当が500円」という若い頃の大部屋生活から、初の主演映画『太秦(うずまさ)ライムライト』への思い、殺陣への工夫や面白さ、《5万回斬られた男》と異名を取るほど斬られ役を演じ続けた俳優人生について語ってくださいました(構成=小杉よし子 撮影=本社写真部)
「どっきりカメラ」とちゃうか!?
実は、2年前の2012年にこの映画の話をいただいた時、「主役だけはありえへん、天地が逆さになっても実現せえへん」言うて、何度もお断りしたんです。主役というのは人気があって二枚目で、芝居ができる人。わしなんか全部ないやないか、思うて。
だいたい、わしが主役の映画に誰が金を出しますか。映画がコケてわしが恥をかくのはいいけど、協力してくださる出演者やスタッフに迷惑をかけたら申し訳が立たへん。それで断り続けていましたが、監督やプロデューサーの熱意に押されて、最後は覚悟を決めました。これは斬られ役の話で、みんなが主役の映画なんや、と。
そんなわけで、この映画が各地でロングランを続けたり、国内外で賞をいただいたりするとは想像もしていませんでした。まさか「どっきりカメラ」とちゃうか!? といまだに思うてます(笑)。けど、こうして映画にお客さんが入って、賞をいただいたりしたことは、これまでの人生で一番嬉しい出来事ですね。
撮影中の2週間は、とにかく出演者やスタッフの足を引っぱらんようにと、そればっかり考えてしまって、ぜんぜん寝られまへん。作品には、わしが10代の頃からよう知ってるお兄ちゃん(松方弘樹さん)や、小林稔侍さん、萬田久子さんらに出ていただいて。主役を演じる大スターの方たちはいつもこんな重圧のなかでカメラの前に立ってはるんや、すごい精神力や、と改めて思いました。
子どもの頃は野山や河原を走り回っていました。実家の周りは自然に恵まれ、川でアユ釣り、海では貝を獲ったり。小学校時代に4年ほど新聞配達をしていたおかげで、体は丈夫。徒競走では負けたことありまへん。中学を卒業後、親戚の米屋で働いた時期がありましたが、照れ臭うて愛想よくふるまえなくて。
米屋を辞めて、別の親戚に紹介してもらったのが、東映京都撮影所。15歳の時です。「撮影所って何や?」と思いながら連れて行かれた先が大部屋で、そらまあびっくりしました。半裸で怖い顔した男が何十人とおるんですから。