〈予防〉自尊心を傷つけない注意を
ADHDは先天性疾患なので、予防はできません。治療は、薬の服用以外に親の対応が大きく左右します。それが、前述した「心理社会的治療」。その一つに「ペアレント・トレーニング」があります。
ADHDの子どもの行儀が悪ければ、親は子を注意します。また、子どもがよその子を殴ったら「何てことをするの!」と叱るでしょう。そのような否定的な対応ばかりとっていると、子どもの自尊心を傷つけ、どんどん自信を喪失させてしまいます。まずは、この病気のことを正しく知り、子どもたちの状況を理解してもらうように保護者を指導します。
「親御さん以上に本人は悩んでいるのですよ。そのことを忘れないでくださいね」。この言葉をかけておくだけで、それからの親の子どもへの対応が大きく違ってきます。障害の本質を正しく理解して対応してもらい、時には社会的常識を子どもに教示してもらう。ただ、この病気が“特別な病気”という考え方はすべきではありません。ごく普通の人にも、多少なりともADHDの面があることをみんなが知っておくことも必要です。この子だけが病気、という偏見を取り払うことも治療の一環なのです。
〈多動性・衝動性〉
□手足をそわそわと動かしたり、いすの上でもじもじしてしまう
□授業中など、座っていなければいけないときに、立ち上がってしまう
□動き回ってはいけない状況で、落ち着かない
□遊びやクラブ活動中におとなしくしていることが苦手
□じっとしていることが苦手
□おしゃべりしすぎることがある
□質問が終わる前に答えてしまう
□順番を待つことが難しい
□ほかの人が話しているところに割り込んでしまう
(DSMーIVーTRのADHD診断基準より改変)
*「注意欠陥」の項目のうち6つ以上、あるいは「多動性・衝動性」の項目のうち6つ以上 当てはまればADHDと診断される