(撮影=本社写真部・奥西義和)
保護猫活動で巻き込まれた詐欺事件――。想像もしていなかった人生のターニングポイントを迎えた女性たちの手記を、作家の唯川恵さんはどう読んだのでしょうか。
(構成=篠藤ゆり 撮影=本社写真部・奥西義和)

施設の運営者にお金を騙し取られて

今回、小説とは違う、手記ならではの感動を味わいたいと、とても楽しみにしていました。半面、原稿を手にするまでは、手記という特性上、少し愚痴っぽい作品が多くなるかもしれないなと危惧していたのも事実です。

ところがいざ読んでみると、3篇とも読後感がとてもさわやか。それぞれ、自分の身に起きた出来事を冷静に見つめて書いた、いい作品だなと感じました。

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53匹の命を救え! 『保護猫詐欺』被害者たちの奮闘記」の青木悦子さんは、保護猫のために奮闘された。猫が好きということが根底にあるとはいえ、使命感と無償の愛があってこその行動だと思います。

保護猫活動を盾にした金銭トラブルに巻き込まれ、ご自身も詐欺の被害者であるにもかかわらず、動物保護管理センターの見学、路頭に迷った猫たちの存在を世間の人に知ってもらう活動など、知識がゼロのところから初めてのことに少しずつ挑んでいく。犬好きの私は、こういったことが現実に起こっていると知れば冷静でいられない部分もあります。

けれど青木さんの、騙し取られたお金に対する不満を書くでもなく、起きた出来事を淡々と畳みかけるように展開していく筆致には、ひとつのエンターテインメント作品を読んでいる気持ちに。同時に、保護活動の大変さを知り、勉強になりました。