「手術をした方がいい」そう医師から言われたら、勿論ほとんどの人が手術を選ぶでしょう。でも、すぐには手術が選べない、手術先が見つからない、そんな人たちもいます。手術以外の方法はないのか他の医師の意見を聞きたい、という場合もあるでしょう。国立がん研究センターの2020年の調査では、治療開始前にセカンドオピニオンについて、担当医から話があった人は34.9%、実際に受けた人は19.5%となっています。
連載『スー女の観戦記』でおなじみのしろぼしマーサさんは、統合失調症の兄が腹部大動脈瘤になり、手術をしてくれる病院探しに翻弄。やっと手術先を見つけましたが――
連載『スー女の観戦記』でおなじみのしろぼしマーサさんは、統合失調症の兄が腹部大動脈瘤になり、手術をしてくれる病院探しに翻弄。やっと手術先を見つけましたが――
兄は家を出ようとしなかった
T大学病院への入院の当日、兄は「全部おまえが勝手にやったことだ。俺は知らない。入院しない」と言い出した。
私は困り果ててT大学病院に電話した。看護師、次に担当の医師が電話で兄を説得したが、兄は家を出ようとしなかった。入院も手術も中止となった。
私はK精神科病院の医師に電話した。
「だめだったか…」医師はそれだけ言って電話を切った。兄の性格を知っていたのだ。
私の挫折感はすさまじく、協力してくれた会社の人たちにも同情された。
後日、私はT大学病院の担当医師に謝りに行った。
医師は、「お兄さんは、いつか腹部大動脈瘤が破裂して出血のショックで倒れる。その時は救急車を呼びなさい。命が助からなかったら救急隊員や運ばれた先の医師に、私の名前を伝えて、手術をしようとしたが、お兄さんが断ったと言いなさい。あなたの責任にはならない」と言った。
私はこの医師と紹介してくれたM病院の医師に感謝した。
兄は入院を拒否したことなど忘れたように、いつもの生活に戻っていった。