左:カトリーヌ・ドヌーヴ 右:マレーネ・ディートリッヒ ©️Studio Harcourt Paris
漫画家、作家、コメンテーターとして幅広く活躍していたさかもと未明さんは、2006年に膠原病を発症し、手指が使えなくなるかもしれない状況になり、「表現」の一つとして歌手としての活動を開始した。その後、病とつき合いながら絵を志して2017年に画家デビュー、着実にキャリアを重ね、2021年、2022年にはフランスの権威ある絵画展サロン・ドトーヌに2回の入選を果たす。何度もフランスを訪れる中で出会ったあるスタジオとその歴史に魅了され、ポートレイトの撮影を決行。今回はスタジオの創設者について綴ります。

前回「誰もが女優気分を味わえる⁉ パリの有名スタジオ「アルクール」でポートレイト撮影体験。そこには自分の知らない私がいた」はこちら

コゼットのことを知りたくなった

スタジオ・アルクールは世界的に有名な写真スタジオだ。1934年に発足してから瞬く間に、フランスを中心にヨーロッパは勿論、ハリウッドなどのスター、世界中の富裕層・知的階級の人々が訪れることになった。

けれども、それだけのスタジオを作った創設者、コゼット・アルクールのことは余り知られていない。同じように実業界で成功したココ・シャネル本人の人生や姿が、ブランド名と共に知られているのと対称的である。

しかし、アルクール・スタジオには、特筆すべき物語がある。コゼットがある男性に愛された証として贈られたのが、始まりなのだ。

そういえばココ・シャネルも富裕な恋人の出資で帽子店を始めたのがキャリアの始まり。「女力」ここに極まれり、という感じではないか。いくら時代がよかったとはいえ、どんな女性がそんな幸運を掴んだのか。私はどうしてもコゼットのことを知りたくなった。

現在のスタジオのスタッフに、「コゼットの写真や愛用した私物など、残されたものを見たいのですが」と頼んでみたものの、「お渡しした写真や本、ネットなどに書かれた記録以上のものは、私たちも知らないんです」とのこと。謎ならば、更に知りたい! 私は、今のフランス語力で可能な限りの資料に当たり調べることにした。