40歳~60歳あたりに訪れる、大人から老人へと移り変わっていく期間を「思秋期」と表現するのは、和田秀樹先生。高齢者を専門とする精神科医を務めてきた和田先生いわく、「思秋期は人生にとって大切な年代であると同時に、年齢を重ねても充実した人生を送れるかが決まる時期」とのこと。50代で訪れる変化と、老化を防ぐために気をつけるポイントが3つあるとのことで―――。
老人は成人と異なった視点から診察が必要
私が医師として専門にしているのは、「老年精神医学」である。もう35年にわたって、老人専門の精神科医として働いてきた。
なかでも、10年ほど勤務していた浴風会(よくふうかい)病院は、日本で初めての老人専門の総合病院で、老人ホームも併設しており、現在でもまだこうした病院は全国で4つしかない。
病院に「小児科」というものがあるように、本来は老人も小児と同じくらい、成人とは異なった視点からの診察や治療が必要である。
近年、日本でも大学病院をはじめとして「老人科」を設けるところが徐々に増えてはいるが、往診やホームの患者さんを診るなど、本当の意味での老年医療の専門家は大学病院には少なく、結局は成人と同じ診察をして、名前だけになっているところが大多数だ。そんななかで、浴風会病院は老人医療の先駆けであり、そこで勤務した10年間では非常に貴重な経験ができたといえる。
たとえば、私はCTやMRIで撮影した脳の写真を年間100~200枚は見てきたが、脳の老化には、年をとるほど個人差が出ることがはっきりとわかった。誰でもいずれ脳は老化していくものだが、その進行の度合いには明らかに個人差があるのだ。