「《もう何歳になってしまった》ではなく、《今日は私の残りの人生でいちばん若い日なのだ》と前向きに解釈し直すクセをつけましょう」(撮影:本社・奥西義和)
「やる気が出ない」「もの覚えが悪くなった」は、あなたの思い込みかもしれません。専門家が脳が秘めている可能性を解説、いつまでも若々しさを保つコツを伝授します(構成=山田真理 撮影=本社・奥西義和)

エイジズムは可能性を狭める

皆さんは、「もうこんな年だし、新しいことに挑戦するのは無理」と考えてはいませんか? 心理学に、「予言の自己成就」という言葉があります。これは、「未来はこうなるのではないか」と思いながら行動していると、実際にその通りになってしまう現象のこと。「できない」と思いながら生きていれば、その言葉に洗脳され、意欲もどんどん削がれてしまうのです。

脳科学では、心臓が死ぬまで鼓動を続けるように、脳も生きている限り「変化」を続ける、というのが常識。実際、いくつになっても神経幹細胞は絶えず新生することが発見されているのです。だからこそエイジズム(年齢に対する偏見や固定観念)によって、脳の持つ可能性の幅を狭めてしまってはいけません。

もちろん体と同じように脳も衰えますが、ある時を境にガクンと落ちるというより、ゆるやかなカーブを描いて老化していきます。刺激のある生活を続けている人は、その落ち方がゆっくりになる。

また、変則的な状況にわざと身を置いて、脳を試す「認知的負荷」をかけると、むしろ脳は活性化することもわかっています。諦めてしまえば、脳がせっかく備えている潜在能力を十分に生かすことができないのです。

近年の脳科学の世界で大きな話題になっているのが、前頭葉の「再評価機能」。主に言語や思考、感情を司る前頭葉には、同じ物ごとに対して「別の解釈をする」という能力が備わっています。たとえばコップに半分入った水を見て、一度は「もう半分しかない」とネガティブに捉えてしまっても、「いや、まだ半分もある」とポジティブに捉え直すことができるというもの。

こうした別の解釈は、前頭葉を活性化するのにも役立ちます。同じように、「もう何歳になってしまった」ではなく、「今日は私の残りの人生でいちばん若い日なのだ」と前向きに解釈し直すクセをつけましょう。考え方一つで、エイジズムの罠から逃れることは難しくないのです。