〈カラオケdondon〉の奥まった一室。そこは通称〈バイト・クラブ〉のための部室。ここの部員になるための資格は、【高校生の身の上で「暮らし」のためにバイトをしていること】。坂城悟はアルバイト先の店長と紺野夏夫の過去の話を聞く。

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「で、あのね悟くん」
 真剣な顔をする。
「友達の父親だってわかったからって、今後あいつに会ったとしても、話しかけたり知ってるふうにはしないようにね。来ないとは思うけれども、もしうちのスタンドに来たときも」
「はい」
「確かに僕の友人なんだけれど、あいつは、わかるよね? 組長なんだよ。はっきり言ってとんでもないことを、警察に捕まるようなことをたくさんしているような奴なんだ。僕がその内容を全部知ってるわけじゃないけれども」
 だと思ってる。
 ヤクザなんだから。
「僕が親しくしているのは、今のあいつがどんなことをやっていようが、僕の中では、それはお互いにだけど、昔から気のいい奴なんだって知ってるからだよ。昔を知ってる友人だからね。それはきっとわかってくれると思う。それこそさ、悟くんも今の親友が将来悪いことをして刑務所に入るようなことをしてしまったとしても、あいつは友人だからって思えるだろう?」
「たぶん、思います」
 刑務所に入ったんだったら、差し入れぐらいするかもしれない。
「僕もそうなんだよ。でも、普段は絶対に会うこともないし、あいつの方から連絡してくることもない。それは、あいつもわかってるからだよ。自分みたいな男が友人面したら、僕に迷惑をかけるからってね。実際会ったのは何年ぶりかな。十年ぐらい会っていなかったかもしれない」
 そうなんだ。
 じゃあ、ヤクザでもちゃんとしたっていうか、そういうのがわかっている人ではあるんだな。