8年前にも僕は肝細胞がんで42日間入院しているのですが、今回のほうが圧倒的につらかった。それは食事があまりに質素だったからです。脳卒中の治療中は過剰なエネルギー摂取を控えないといけない、という説明でしたが……。
毎食がサバなど魚の煮たのを一切れ、野菜のおひたしみたいなのが一鉢、それにご飯。これでおしまい。
さらにつらいのは、料理にまったく塩気がないことでした。とにかくマズい!こんなにマズいものが世の中にあるのかと、感動を覚えるくらいマズいのです。
がんで入院した時も塩分は控えなきゃいけなかったけれど、納豆だけはタレ付きのパックで出てきたんですね。小口切りのネギもちょこっと付いていた。
それを納豆に混ぜて食べ、最後にパックの底にタレの染みたネギが一切れ二切れ残ったのも大事に大事に使って(笑)、残りのご飯を食べる。そんな涙ぐましい努力をしながら、食事をしていたんです。
今回の入院食は、それを上回りました。味のしない煮魚、醤油が一滴かかったかかからないかのホウレンソウのおひたし。
ああ、ここに海苔の佃煮かイカの塩辛があったらどんなに嬉しいか。イカの塩辛の足についた小さなイボ、先にいくほど小さくなっていくイボの、その一個でも口にできたら……と思いを募らせたものです。