2023年、18年ぶりのセ・リーグ優勝を果たした阪神タイガース。そのタイガースに14年から19年まで在籍していた横田慎太郎さんは、21歳で脳腫瘍と診断され、23年7月に28歳という若さで亡くなりました。「純粋でロマンチックな一面も持っていました」と話すのは慎太郎さんの母・まなみさんです。今回、作家で演出家である中井由梨子さんが、ご本人たちからうかがったエピソードを元に、まなみさんに替わって綴ったノンフィクションストーリーをご紹介します。
プロ野球人生の始まり
2014年8月3日。
ウエスタン・リーグ、オリックス戦にて、背番号24番を背負った慎太郎は、プロ初のホームランを満塁ホームランで飾りました。
翌日のスポーツ紙には『凄いぞルーキー!』の見出しと共に慎太郎の全身写真がドン、と掲載されました。こうして本当に、慎太郎はプロ野球選手の人生を、大きな歓声と共に歩き始めたのです。
2015年3月。
ついに甲子園球場で行われる一軍でのオープン戦に慎太郎は出場できることになりました。少し前に出場したソフトバンク戦でタイムリーを放って初打点を記録していましたから、一軍定着を目指して意気揚々と試合に向かったと思います。
私は自宅のテレビで試合中継を見ておりました。慎太郎が夢見た甲子園。そのグラウンドでのプレー。
しかしその日は出場したものの良い結果が残せず、存在をアピールすることができていませんでしたが、私は甲子園に立てた、というだけで遠く離れた鹿児島からでも感動で涙ぐみました。