エノケンから教わった人生の教訓

さて、服部良一と笠置シヅ子が戦後初めて組んだのが、3月2日から4月10日、有楽座での榎本健一一座「舞台は廻る」六景(作・演出・菊田一夫)だった。

昭和のはじめ、浅草で一座を旗揚げして、その後丸の内の舞台に進出、東宝の前身であるP.C.L.映画で数々の音楽喜劇映画に主演。

シヅ子がエノケンに会ったのは、この年の2月、「舞台は廻る」の稽古場だった(写真提供:Photo AC)

エノケンの愛称で「喜劇王」となった榎本健一と、「スウィングの女王」笠置シヅ子は、戦前、SGD(松竹楽劇団)時代にラジオ「音楽は嬉し」で共演していたが、舞台はこのときが初共演だった。

シヅ子がエノケンに会ったのは、この年の2月、「舞台は廻る」の稽古場だった。

エノケンがシヅ子に言ったのは「君は歌手だから芝居はよくわからないだろうけども、君の芝居はツボがはずれている。しかしそれがまた面白い効果を出しているので改める必要はない。僕は君がどんなにツボをはずしても、どこからでも、はずしたまま突っ込んで来い」だった。

シヅ子はそれを生涯忘れぬ教訓とした。