「杉村春子先生が観にいらした時は、もうワクワクしてときめいて、青年みたいでしたね」(撮影:岡本隆史)
演劇の世界で時代を切り拓き、第一線を走り続ける名優たち。その人生に訪れた「3つの転機」とは――。半世紀にわたり彼らの仕事を見つめ、綴ってきた、エッセイストの関容子が聞く。第24回は俳優の篠田三郎さん。初舞台ではセリフを噛んだりと、お客が笑い出す場面もあったと語る篠田さん。そんな篠田さんが劇団民藝に所属することになったのは「一にも二にもそのお人柄」だそうで――(撮影=岡本隆史)

<前編よりつづく

杉村春子先生から教わったこと

篠田さんのNHK大河ドラマ出演作を見るだけでも、『花神』の吉田松陰(77年)、『草燃える』の源実朝(79年)、『山河燃ゆ』の三島啓介(84年)、『武田信玄』の山県昌景(88年)ほか、7作品に及んでいる。

私が特に好きだったのは、NHK銀河テレビ小説の『女の一生』(77年)の栄二役で、布引けい役は樫山文枝さんだった。これは文学座の財産とも言える森本薫の名作で、杉村春子・北村和夫の名演があまりにも素晴らしかったが、テレビの若い二人の熱演にも好感が持てた。

――北村和夫さんの栄二は残念ながら観てないんです。でも舞台でご一緒したことはあるんですよ。石井ふく子さんの演出で『春日局』。ご自身は徳川家康の役なのに、なんか違う感じの役みたいにして出て来たり、楽しい方でした。

杉村春子先生が観にいらした時は、もうワクワクしてときめいて、青年みたいでしたね。