新聞配達で学費と生活費を得る

礼文島の同僚にギターを弾く音楽好きな人がいて、僕も時々ギターに合わせて歌わせてもらっていたのですが、あるとき「その声でなんで歌手を目指さないの?」と言われて。

実は、歌は昔から好きだったものの、音楽と縁のない環境で育ったため、仕事にするという発想がなかったんです。でも、そのときはなぜか「そうだ、歌をやろう」と素直に思えたんですね。バイト生活を始めて1年半、僕は21歳になっていました。

まずは基礎を学ぼうと、東京・高田馬場にある「ESPエンタテインメント東京」のヴォーカルコースに入学。新聞奨学生として新聞配達をすることで、学費と生活費をまかないました。そしてこの経験が、のちに大きなチャンスを運んでくれることになるのです。

在学中の生活は極めて規則正しいものでした。まず夜中の1時半に起きて、新聞にチラシを挟み込む作業。2時半から担当エリアの住宅400軒に配達。朝6時に終えると、寮でシャワーを浴び、まかないの朝食を食べて学校に行きます。

12時半に授業が終わると寮に戻り、14時頃から夕刊の準備。17時には配り終わるので、またまかないのご飯を食べて20時頃に就寝。この生活を卒業までの2年間、ほぼ毎日続けました。大変ではありましたが、食事が出てお給料ももらえたので、すごくありがたかったです。

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