あらゆる関係の最上位

それはいいとして、先輩の言っていた「この人のために何かしてあげたい」「人生を分かち合いたい」という思いと、「この人と一緒になれば自分のステータスもあがる」「とにかく性欲を満たしたい」みたいな下心が、全部「恋愛感情」と雑に括られることにとても違和感がある。

さらに、恋愛至上主義は、「あらゆる関係の中で恋愛が一番上」だと、さも社会全体の合意形成がされていると言わんばかりに関係性に序列を作り、一方的に強制してくる。

「付き合っているの?」と聞かれた男女が、反射的に「”ただ”の友達です」と否定したり、友達と先約があっても、恋人との約束が優先されたりするのが、その例だろう。恋愛や結婚が特別と言われるのは、そのパッケージの中で相手のために心を砕き、大事なものを差し出すような、本質的な関係を築く人が多いからではないかと思う。

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一対一の深い関係は=恋愛や結婚という考えが固定化しているからこそ、「いい年して恋愛していない人は人間的に未熟だ」という言説が幅を利かせるし、必然的に、恋愛や結婚が、あらゆる関係の最上位に据えられているのだと思う。

でも、パートナーシップや、人間同士の本質的な関係には他にもいろんな形がある。どんな形で出会ったとしても、ひとりの相手と、長く、深く関わり、許し合い受け入れていく過程は人間的成長をもたらすのではないか。

実際、友情を長く続けるためには、相手との価値観のズレが生じた時に話し合って擦り合わせたり、相手の許せないところが出てくるたび、それを許したり。そういう積み重ね、メンテナンスが必要になる。