24時間目が離せない

退院後の生活は本当に大変でした。病気の前は賢くて育てやすい子だったのに、とても手のかかる子に変わってしまいました。

脳の中のバランスが崩れてしまったのか、とにかく動き回る、危ないことをする、夜中に寝ないなど、24時間目が離せません。刃物を触ろうとしたり、ポンと投げ捨てようとしたり、さらに、グラスを叩いて割ってその上を歩こうとしたりすることも。

とにかく何をするのかわからないのです。トイレに行く間も置いておけないので、一緒に連れて入るような状態でした。

知能指数は1〜2歳だと言われましたが、2歳にもならないと思います。とにかく1日1日を過ごすのが精一杯。でも、心根は優しくてお母さん子だったので、それだけが救いでした。

 

つらかったのは、近所の同学年の子どもたちが幼稚園に通う姿を見なければならなかったこと。一緒に通園する予定で、入園の準備もしていたのに、うちの子だけ通えない……。元気な子どもたちと息子を比べて、落ち込む毎日でした。

そんななか、縁あって今の土地に引っ越すことになりました。これでもう、あの子たちの姿を見ないですむ……。何事も逃げないことが大事と思っていますが、このときばかりは逃げることを選びました。逃げて大正解だったと、今でも思います。

義両親も慣れ親しんだ地元を離れて、一緒に来てくれました。家のことは私に一任されていましたが、助けの手があるのは本当にありがたかったです。娘の幼稚園の送り迎えも義母がしてくれました。

『80歳。いよいよこれから私の人生』(著:多良久美子/すばる舎)