息子。多くの方に支えられて、ここまで来ました。(撮影:林ひろし/写真提供:すばる舎)

いいことだけを書くようにしましょう

その後、息子は養護学校に通うようになりました。「薬で治らないなら、教育が薬になるのではないか」と思ったのです。

まだ数の少なかった養護学校は、車で往復2時間かかる場所にありました。

毎朝、片道1時間かけて車で息子を連れて行き、1時間かけて家に戻ってきます。その間に家事をこなし、授業が終わる頃にまた1時間かけて迎えに行き、1時間かけて連れて帰ってきます。

送り迎えに4時間かかり、大変ではありましたが、24時間息子に張り付く生活でなくなり、ほっと一息でした。

養護学校に通い始めた当初は、まだ悲嘆にくれていました。息子はあれもできない、これもできない。人に迷惑をかけてばかり……いつも「すみません」と謝っていました。

あるとき、担任の先生が「明日から連絡帳の書き方を変えましょう。悪いことは一切書かないでください。いいことだけを書くようにしましょう」と言われました。そんなふうに考えたことがなかったので、私にとっては目から鱗の言葉でした。

それから、必死になって息子のいいことを探して、連絡帳に書く日々。先生はいつも、「素晴らしい!」と褒めてくれました。

悪いところ、ダメなところに目を向けず、いいところ、できることに目を向ける。「これができない」と否定するのではなく、「じゃあどうしたら良くなる?」と、次につなげて前向きに考える。息子の見方がそんなふうに、だんだん変わっていきました。