息子は中学、高校、通園施設を経て、28歳のときに現在の生活介護事業所に入所しました。
当初は月〜木でしたが、10年ほど前からは月〜金に施設にいて、週末に自宅に戻るようになりました。土曜日の朝、車で迎えに行き、月曜日の朝に送りに行きます。今は、この生活を1日でも長く続けられたらと思っています。
息子は55歳のおじさんですが、心はピュアなまま。目がきらきらしています。年寄り2人の家に息子が帰ってくると、花が咲いたように明るくなります。
以前は、息子に対してどうしても命令口調になっていましたが、今は対等。私たちも年をとり、子ども返りしたようで、知能的には3人が同じくらいねと笑っています。
会話はできませんが、息子の言いたいことはわかっています。「ごはんはちゃんと食べましたか?」と聞くと、息子の言葉を代弁し、「うん、食べたんやね。よかった、よかった」と私が答えます。
ひとり芝居のようですが、それが楽しいのです。息子は元気の源です。
※本稿は、『80歳。いよいよこれから私の人生』(多良久美子:著/すばる舎)
の一部を再編集したものです。
『80歳。いよいよこれから私の人生』(多良久美子:著/すばる舎)
人気のYouTuber多良美智子さんの8歳下の妹、久美子さん。
昨年80歳を迎えた。決して「安泰な老後」ではない。息子は4歳で麻疹により最重度知的障がい者に。娘は早逝。85歳の夫はいつ介護が必要になってもおかしくないが、頼れる子どもや孫はいない…。
けれども、するべきことは全部やり終わった。忙しい人生だったが、今やっと自分のしたいことに使える時間がたっぷりできた。「もうこの年だから」を「この年だからこそ」に変える生き方。巻末に姉妹対談収録。