「料理はずっと作っているものばかりで、珍しいものはありません。でも最近、挑戦したいことができました」(撮影:林ひろし/写真提供:すばる舎)

内閣府が発表した「高齢社会白書(令和3年版)」によると、65歳以上の者のいる世帯は日本の全世帯の49.4%。そのうち夫婦のみ世帯が一番多く約3割を占め、単独世帯を合わせると約6割が頼れる同居者のいない、高齢者のみの世帯となっています。
北九州の郊外で、夫と障がいを持つ息子の3人で暮らす多良久美子さん。8年前に娘をがんで亡くしています。頼れる子どもや孫はいないけれど、80代になった今、不安もなく毎日が楽しいと語る久美子さん。年をとり、食べるのも作るのもシンプルな、《一汁一菜》の食事にしていると話します。そんな久美子さんの作る《一汁一菜》メニューとは――。

食べるものも作るのもシンプルに

年をとり、夫婦共々食が細くなってきたので、食べるものも作るのもシンプルにしていきたいと思っています。

料理研究家の土井善晴さんの著書『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社)を読み、私の思いとぴったり重なりました。簡素でシンプル、そして何よりも縛りがない自由な食。でも、ちゃんと栄養は足りています。土井さんの提案を参考に、私なりの一汁一菜を考えています。

土井善晴さんの著書。料理に対するシンプルな考え方に学びが多いです。(撮影:林ひろし/写真提供:すばる舎)

[ 一汁 ]

一汁の基本は味噌汁。出汁には、和洋の縛りはありません。出汁昆布、いりこ、出汁パック、粉末鶏がらスープの素、固形のコンソメスープの素など、いろいろ使います。牛乳やバター、オリーブオイルを加えることも。自由な発想を土井さんから学びました。

具材も自由に、冷蔵庫にあるものを入れます。季節の野菜や豆腐、魚などのタンパク質を組み合わせて。3品以上入れると、ボリュームが出て、これだけで立派なおかずになります。

彩りに、小ねぎを最後に加えることが多いです。小口切りにして冷凍してあるので、いつでもサッと加えられます。夕食には必ず味噌汁などの汁物はつけます。