「日々の中で、食事は一番の楽しみ。元気の源です。それは88歳の現在も変わりません」(撮影:馬場わかな/写真提供:すばる舎)
古い団地でひとり暮らしをする様子をYouTubeで配信し、登録者数15万人を超える人気となっている多良美智子さん。昭和9年に長崎で8人きょうだいの7人目に生まれ、高校生の頃から70年、ずっと料理をしてきたという多良さん。65歳の時に調理師学校に通い、調理師免許も取得したといいます。そんな食べること、料理をすることが大好きな多良さんの、元気の秘訣、料理への思いとは――。

食べることは一番の楽しみ、元気の源です

振り返れば、長い人生のずっと、食事をつくり続けてきました。

20代、ひとり暮らしのときは自分のために。結婚してからは家族のために。子どもたちが独立してからは、夫とふたり暮らしのなかで。そして、8年前に夫が先立ち、ひとり暮らしに戻ってからは、自分のために。時々わが家に来る次男親子にも──。

65歳のときには調理師免許を取得しました。料理は好きで、苦になりません。その根底にあるのは、とにかく「食べるのが好き」ということ。おいしいものに目がないのです。

 

それは、長崎の生家にさかのぼります。

果物の卸と小売業を営んでいた父は、食べるのが好きで料理上手な人でした。終戦の翌年に母が亡くなってからは、男手ひとつで私たち7人姉妹を育ててくれました。

毎日の夕食をつくるのは父。商店街の組合長や地元の自治会長もしており、人を呼ぶのが大好きな人だったので、夕食には父の友人が誰かしら、一緒に食卓を囲んでいました。

大人数分の食事をつくるため、市場で野菜やら魚やらをトロ箱いっぱいに買ってくる父の姿を、今も思い出します。

買ってきた魚を自らさばき、お刺身に塩焼き、煮付け、身をすってツミレ、さらには干物に……と調理していた父。

どれもとてもおいしかった。長崎は魚がおいしい土地です。もともとおいしい魚を、様々に調理して、さらにおいしくいただく……。食べること、料理することへの関心は、そんな父からの影響が大きいです。