年長の姉たちも父を手伝って、料理をしていました。私はそれを横から眺めるのが大好きでした。おいしいものができあがっていく過程は、何時間見ても飽きませんでした。

私も自分でおいしいものをつくって食べたい──それが私の料理の原点です。

 

日々の中で、食事は一番の楽しみ。元気の源です。それは88歳の現在も変わりません。

「今日のお昼は何を食べようかな」と考える時間が、一番幸せです(笑)。

食べることが、生きる原動力になっています。自分ひとりの食事でも、食べたいものを食べるためなら、調理も苦ではありません。とはいえ、私の食事はごく質素で、簡単なものしかつくりませんが。

 

10歳のとき、長崎で被爆しました。被爆者手帳の交付を受けていますが、大きな病気もしないで過ごせたのは、しっかり食べてきたからかなと思います。

健康でいるために食事に気をつかうものですが、むしろ私は逆です。おいしくごはんを食べられる体でいるために、健康に気をつかっています。なにしろ食いしん坊なので(笑)。

さすがにこの歳になり、食が細くなりました。昔のようには食べられませんが、好きなものを少量でも楽しんで。毎食の時間を大切にしていきたいと思います。

『88歳ひとり暮らしの 元気をつくる台所』(多良美智子:著/すばる舎)