信長の場合

たとえば信長からは「国」へのこだわりがあまり見られません。

『「失敗」の日本史』(本郷和人:著/中公新書ラクレ)

信長は伊勢国に侵攻しますが、生産力の高い北伊勢だけ自分のものにすると、手強い敵がいる南伊勢は、一度、放置してしまう。そうした融通が利く。

つまり「国という枠」を完全に支配していかないと気が済まないということはなく、信長の場合、街道や、河川など地形に合わせて自分の勢力を伸ばしていったわけです。

国というものは山や川の地形に合わせて設定されていますから、結果として国単位で勢力を伸ばしていくのは効率的なのですが、それでも信長の場合、それはあくまで「見た目」であって、実態としては国にはこだわらず、必要とする「地域」を手に入れていきました。

その点、信玄は国というまとまりにこだわっていた。