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昨年は、モトザワ自身が、老後の家を買えるのか、体当たりの体験ルポを書きました。その連載がこのほど、『老後の家がありません』(中央公論新社)として発売されました!(パチパチ) 57歳(もう58歳になっちゃいましたが)、フリーランス、夫なし、子なし、低収入、という悪条件でも、マンションが買えるのか? ローンはつきそうだ――という話でしたが、では、ほかの同世代の女性たちはどうしているのでしょう。今まで自分で働いて自分の食い扶持を稼いできた独身女性たちは、定年後の住まいをどう考えているのでしょう。それぞれ個別の事情もあるでしょう。「老後の住まい問題」について、1人ずつ聞き取って、ご紹介していきます。

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サ高住を考えている

誰もが知るような大企業に勤める正社員だとしても、女性は一般的に、まだ男性に比べて出世も難しいし給料も上がりません。生涯年収も低いので、貯蓄額も限られます。結果、老後の終の住処を買う時の予算も限られます。

そんな中、まだ定年前なのに、一足飛びに「高齢者住宅」を検討しているのが、紀美子さん(仮名、59)です。退職後の住まいとして「サービス付き高齢者住宅(サ高住)」を考えている、といいます。高齢者住宅なんてまだ先、後期高齢者になってからでいいんじゃない?と、モトザワは思っていたのですが……。

「まあ、広い玄関!」

東京から新幹線で1時間半。そこから車圏内にある、ある地方のサ高住を、2024年3月上旬、紀美子さんは内見に行きました。サ高住への入居条件である「60歳以上」を満たす1年後に備えて、真剣に検討するためです。

最初に見た部屋は、18坪(約60平米)の2LDK。さすが高齢者住宅、室内はすべて車椅子に対応可能なバリアフリーです。玄関近くの水回りもゆったりしています。リビングには幅広の掃き出し窓があり、外には小さな庭。キッチンは標準仕様の壁付けではなく、オプションでリビングに向けたカウンターキッチンに変更してありました。