筆者の関容子さん(左)と

父から自分、そして息子へ

2023年は萬斎さんが演出する二つの舞台があった。シェイクスピアの『ハムレット』と、オペレッタの『こうもり』。特に前者では、能がかりの先王の亡霊の扱いと、狂言仕立ての旅役者の趣向が際立つ演出だった。

――ああ、そこが僕の演出の特徴ですからね。お能というのは亡霊専門劇ですから、亡霊のリアリティは得意とするところ。怨念とか情念を伝えるものだという意味で、こっちはプロですからね。

そして旅一座のくだり。あそこはどのプロダクションでもいつもうまくいかずにダレるんですよ。ちょうど『ハムレット』の中盤に出てきて、芝居の背骨となる場面なんですね。そこをどう面白く、かつメインのストーリーにつなげていくかを一番考えましたね。

批評家の中にもそこを指摘される方はいなかったので、そう言っていただくのはありがたいです。

喜歌劇の『こうもり』は、看守のフロッシュ役が上方落語の桂米團治さんだったので、三幕だけの出演じゃもったいないなと思ってね。最初から活動弁士のように登場させて、「バカですねぇこの人たち」って、一つの批評性を持たせる役割にしたんです。

時々中央に出てきて歌ったり踊ったり、そういう自由度も入れて。おかげで大いに盛り上がってましたね。