多彩な活躍の連続で。では第3の転機となるのは……。

――今、ですかね。世田谷パブリックシアターの芸術監督も、Eテレの『にほんごであそぼ』も20年やって、一応区切りがつきましたから。今、石川県立音楽堂の邦楽監督をしているんですが、今度はオーケストラを自由に使えるんですよ。それで「萬斎のおもちゃ箱」ということで、また次々面白いことをやっていこうと思ってます。

それと、やっぱり映像の仕事はやりたいなと思いますね。去年、初めて映画監督をしたんです。WOWOWの「アクターズ・ショート・フィルム」といって、役者に短篇映画を監督させる企画で、『虎の洞窟』という、中島敦の『山月記』を元にした映画を作りました。

中島敦と言えば、以前に演劇として、父が李徴という虎になる男をやって、僕が『名人伝』の紀昌を演じましたけど、この間の金沢では僕が李徴で、息子が紀昌を、つまり一つずつ代送りしたんです。

 

『ハムレット』も無事に代送りなさいましたね。

――やっぱりまぁ、父もいろいろな演劇に参加してきましたけど、僕のほうがもう一つ突っこんだところまで来ているし、その精神を息子に伝えたいなと思う。

それがこれからの能狂言のあり方、アップデートの仕方というか、この世の中で狂言という文化を受け継ぎながら、どう生きていくかを考えることにつながるんじゃないかと。外と交わることで己を知るという意味でも、今回『ハムレット』の継承ができてよかったと思っています。

 

これからも野村家三代のご活躍に注目して参りたいと思います。


2024年3月29・31日に東京・国立能楽堂にて野村萬斎さん主宰の狂言会「狂言ござる乃座69th」を上演予定


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