作文の課題
アドラーは、17歳か18歳の若者が、努力はしているが、まだ何をしていいかわからないのは困ったことだといっている(『個人心理学講義』)。
この年齢に達する前に、将来どんな仕事に就くかに関心を持てるように努力しなければならず、学校で将来何になりたいかというような題で作文の課題を出すことを提案している。
書くようにいわれて初めて、そういう課題がなければずっと後まで直面しないかもしれない問いに否応なしに直面することになる。
アドラーのいうように、どんなことをしてみたいかと考える援助はあっていいと思うが、必ず、「職業」選択への関心を喚起しなければならないわけではないと私は考えている。
親は子どもにどうしたいのかたずねることはできる。親の考えとは違う答えが返ってきたら、親は子どもの人生について自分の考えをいうことはできるが、それ以上のことはできない。
※本稿は、『悩める時の百冊百話-人生を救うあのセリフ、この思索』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『悩める時の百冊百話-人生を救うあのセリフ、この思索』(著:岸見一郎/中央公論新社)
『嫌われる勇気』の著者は、就職難、介護、離別などさまざまな苦難を乗り越えてきた。
氏を支え、救った古今東西の本と珠玉の言葉を一挙に紹介。
マルクス・アウレリウス、三木清、アドラーなどNHK「100分de名著」で著者が解説した哲人のほか、伊坂幸太郎の小説や韓国文学、絵本『にじいろのさかな』、大島弓子のマンガなどバラエティ豊かで意外な選書。
いずれにも通底するメッセージ=「生きる勇気」をすべての「青年」と「元・青年」に贈る。