夫の暴力を止められない自分を責め…
事態はさらに悪化する。日に日に表情が曇っていくミサキさんを見かねた夫が、「俺の嫁に負担をかけるな!」と、実の母親の顔を平手打ちするようになってしまったのだ。殴られながら、「どこの誰だか知りませんが、あんたは兵隊かい? 私を見くびるな!」とわめく義母……。
「そうした夫の暴力行為を、『介護でつらい思いをしている私の負担を減らしたいと思ってのこと』と肯定し、義母を守ろうとしない自分は最低な人間だと自己嫌悪に陥りました。このままでは夫も私も、そして義母もダメになる。そう思っていても、夫を止めることができなくて」
たまに顔を見せる長男夫婦は、義母の顔に腫れや青アザがあるのを見ておかしいと思ったに違いない。しかし、施設に入れるつもりでいた彼らは「そんなに大変なら私たちが……」とは言えなかったのだろう。見て見ぬ振りを続けていた。
一方、ミサキさんの夫も、一度「俺が看る」と実家から長男夫婦を追い出した手前、「やっぱり施設に入れることにする」とは言えなかった。
「自己嫌悪や無力感、さまざまな思いに苦しめられて、私はうつ状態に陥りました。義母の介護どころか、トイレ以外、布団から起き上がれず、入浴も歯磨きもできない日々が3ヵ月ほど続くことに」
妻の異変に慌てた夫は、ようやく母親を介護施設へ預けた。「ミサキさんは、どこにいるの? ミサキさん、私を救いに来て!」と義母は職員に訴え続けたそうだ。ミサキさんはうつ状態にありながらも、毎日面会に行った。そしてほどなく、義母は亡くなってしまう。
「暴力を振るい続けた夫は、葬儀の間中、母の遺影を抱えて号泣していました。義母の介護をきっかけに、暴力を振るう夫の裏の顔を見てしまったために、夫への不信感が大きくなりました。現在、離婚を考えています」