そして7月11日、母は逝きました。前日の昼間、呼吸が時々止まるようになり、いよいよ危ないという段階で、母が突然、普段の話し方で「夕飯のお肉、買いに行かなくちゃ」とつぶやいて。どうやら僕の夕飯の支度をしなくては、と思ったらしいのです。いつも子どものことを気づかってくれる、本来の優しい母でした。
介護と向き合うために仕事を辞めないで
振り返ると、母の介護は自分なりに精いっぱいやったつもりだし、そのことに後悔はありません。でも、「あれでよかったのかな」「こうすればよかったのかも」といった思いはあります。僕はわけもわからずに介護をスタートさせたけれど、何より大事なのは「情報」だと痛感しました。
介護者の会や団体は全国に数多くあります。失敗や反省も含めて、介護体験を発信することなら僕にもできるし、それも誰かの役に立つのではないか。そう考えて、今はいろいろな会に参加させてもらっています。
あらためて僕の経験から言うならば、介護に一所懸命に向き合おうとすればするほど仕事は続けられないと思いがちですが、絶対に辞めないほうがいい。仕事を失うと、精神面と経済面、ダブルで追い込まれます。
介護は自分中心に考えていいものだし、何より自分の人生を大切にしていいと思うのです。子どもが自分の人生を犠牲にしていたら、親もつらいですよ。だから息抜きも必要です。まわりの人も介護中の人に対して遠慮せず、誘ってあげてほしい。
お金のことで言えば、アルバイトをしても追いつかず、介護中は収入に対して支出がその倍くらい。借金もしました。あと1年ほどは、その返済が残っています。
ただ、もう時間の制約はないので、どんな仕事でもやっていこうと思います。母は、看護師さんたちに「うちの息子、知ってる?」と自慢していたようです。「そんなことやめてよ」と言ったけど、僕が芸能人として頑張っている姿を見るのが嬉しいのなら、また喜ばせてあげたい。きっとどこかで見てくれているはずだから。それが、これから自分ができる親孝行ではないかと感じるのです。