尻餅をついて坂から転げ落ちるかのよう
先日、インタビューしたご縁で交流が続いている「お涼さん」こと俳優の坂口涼太郎さんと、『死ねない理由』の刊行と、坂口さんの連載エッセイ「今日も、ちゃ舞台の上でおどる」(講談社 mi-mollet(ミモレ))の開始を記念してトークイベントを行った。
仕事柄、芸能人と接する機会は多いが、当然、雲の上の存在だと認識している。違う世界を生き、絶対にこちらの世界にやってこない人。そんな認識も失礼だと思うが、それが正直なところである。
だから、一緒にイベントをやりましょうなんて、口が裂けても言えない、と思った。でも、もし誰かとイベントをやるなら? と考えたら、真っ先に思いつくのがお涼さんだった。
読書家で、溢れんばかりの文化的素養がある。ちゃめっけや剛腕なユーモアセンスがありながらも、密度が高く誠実で、ずっしりとした気高い文章をお書きになる。感性が驚くほどピュアでクリア、研ぎ澄まされている。紡ぎ出す言葉も、実に愉快で、また本質的。そんな方とご一緒できないだろうか、と思ったのだ。
最近の私の目標は、「欲しいものには欲しい」と言うこと。私なんて、私なんか。そんな謙遜の形をした醜い自己卑下で、本心をないものにしないこと。思っていることは言わないと分からないし伝わらない。
だから、ありったけの力を振り絞り、勇気のかけらをかき集めてオファーをした。すると、「おおん、ええよ。楽しみ~」的なノリで快諾してくださったので、大いに拍子抜けをし、尻餅をついて坂から転げ落ちるかのようだった。