この瞬間だけがずっと続けばいいのに
交わした言葉が、会場の雰囲気やそこを覆うエネルギーが、私たちの心に、身体に落ちて、沁み込み、溶けてゆく。その心地よさに浸りながら、夜の帳が落ちていく時間を共有できる贅沢さ。そうやって身体に沈殿したものが、私の生きる糧になる気がする。
振り返って思うのだ。どれだけ恋しく、慕わしい夜も、もう二度と戻ってくることはない。この瞬間だけが、ずっと続けばいいのに。そう思う時間は、手の内からこぼれ落ちていく。
でも、そこには、厳然と、歴然とした豊かさがあった。確かに私は、物凄くしあわせだった。これからも、私はあの夜を思い出すんだろう。宇宙の広がりや、自分がそこに存在し、この世界の一部を構成しているという事実を感じるような、そんな、あの濃く、密で、深々とした夜のことを。
きっとその夜の記憶が、私のこれからの人生を照らしてくれる。