(写真提供:Photo AC)
大小1万4000余の島々からなる日本列島。ユーラシア大陸から「独立」するまでの過程や、鉄や黄金などの列島がもつ資源についてなど、地学教育の第一人者である伊藤孝氏が解説した『日本列島はすごい』(中公新書)より、日本列島史の一部をご紹介します。今回は、陸地ができる仕組みについて。地球の表面積の30%しかない陸地の作られ方とは――。

削り続けられる陸

小学校で「地球の表面積の70%が海、30%が陸」と習ったときの印象はとくに記憶にない。別段驚かなかったのだろう。大学に入り、「海の平均の深さは4000m、陸の平均の高さは800m」と教わったときは少しばかり驚いた。海は広くて深い、陸は狭くて低い、そのように意識をしだすと、何か足元が心もとない感覚にならないだろうか。

今、海に行くと人工物で守られていない海岸を見つけるのは難しい。港はコンクリートで覆われ、テトラポッドが置かれていない砂浜は貴重な存在となった。テトラポッドは大荒れの天候のときに陸が海水に削られることを防いでくれている。

また、川に目を転じても、台風が直撃し暴風雨に見舞われれば、普段の清流も濁流となる。陸の一部をかたちづくっていた土壌や岩石が削られ、水の営力で川に運ばれ、海に運搬されるからである。

このように、陸地は徐々に削られているのだ。しかし、そのような働きが何十億年も延々と続いてきたのに、いまだに陸が30%もあるのはなぜだろう。むしろ陸地が残っていることに驚愕すべきではないのか? すべて削られて「陸のない地球」、映画『ウォーターワールド』のようになってもおかしくないはずだ。

この問題の不思議さは、図1-3によってさらに増す。これは地球全体を対象として標高・水深ごとの累積面積を表現したものだ。この図を見ると「陸の危うさ・はかなさ」がより鮮明になる。しかし、いったいなぜ陸が残っているのか? 簡潔に述べると、それは陸を削る侵食作用に均衡するように、「陸を作る作用」が働いているからである。

(図1-3)地球全体を対象とした標高・水深ごとの累積面積(中西正男・沖野郷子『海洋底地球科学』<東京大学出版会、2016>より引用)