前向きな性格と幸運に助けられ
「すごいくない? ね、なんとかなるのよ」
とても前向きな性格でエネルギッシュな紀久子さんです。もともと、おおらかな性質で、将来についても「なんとかなるよ」。杞憂とは無縁です。とはいえ、会社を畳んだ後、半年ほどは、何をする気にもなれませんでした。敗戦処理を闘ったのです。当然、身も心もぼろぼろに疲れ果てていたでしょう。
ただ、嘆いてばかりもいられません。収入は、事務局の数万円のみ。恐ろしいことに、99万円あった手元のお金はどんどん減っていき、8月には預金残高はなんと3万円に。ヤバい!と思いましたが、そういうタイミングでなぜか、社長時代の伝手で仕事が舞い込みます。なんとか乗り切ってこられました。
ラッキーなことに、翌2020年からは、公的年金の一部がもらえるようになりました。紀久子さんと同い年の女性は、老齢厚生年金の報酬比例部分が61歳から支給されるのです。「特別支給の老齢厚生年金」といい、年金の受給開始年齢が60歳から65歳に引き上げられたことに伴う経過措置です。紀久子さんはこの制度をまったく知らず、ある時、もらえると気付いてびっくり。
「若い頃は年収が高かったから、厚生年金の報酬比例部分もすごく払っていた。社長になってからも、ずっと厚生年金は払っていたし。年金やってて良かった、と思いました」。高給取りは、そのぶん報酬比例部分も多くなり、掛ける分ももらう分も増えます。社会保険料が高いと嘆いていても、こうやって実際に困っている時に助けてもらえると、有り難みが身に染みますね。