失った記憶を呼び覚ます便利なひとり言

脳にしてみると、声帯や顔の筋肉を動かして発せられた言葉は、発せられたという事実で、エピソードと同じ意味と重みを持ちます。

それゆえに、何かを覚えるときは体を動かし、声を発声して覚えます。

それによって、エピソード記憶に近いものとして、長期記憶に残すことができるのです。

また、蓄えられた長期記憶を呼び覚ますときにも、ひとり言が大きな力を発揮します。

探し物をするときに、無言で探すより、「ノートはどこに行ったのかなぁ」とひとり言をつぶやきながら探してみてください。

すると、ノートという言葉をキーワードにして、さまざまな連想が浮かび、それが長期記憶を刺激して、ノートのありかがフッと思い出されるわけです。

長期記憶に入っている情報は、ワーキングメモリを使わないと取り出せません。

そのワーキングメモリを動かすのが、ひとり言なのです。

総じて言えば、記憶力をアップさせるには「言葉」──それも「ひとり言」がとても大きな力を持っているということです。

 

※本稿は、『なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。


なぜうまくいく人は「ひとり言」が多いのか?』(著:加藤俊徳/クロスメディア・パブリッシング)

「ひとり言」には、自分の気持ちを鼓舞して、やる気を出させる力があります。

そんなひとり言のメカニズムを、脳科学的な視点から解き明かし、日常生活の中で上手にひとり言と向き合うことで、自分の能力を高める方法を提案していきます。