頼朝や実朝が源氏物語に傾倒した痕跡はあまりない

そしてこの時代に最も目立つ源氏出身者は誰かと言うと、道長の正妻、源倫子なのです。『光る君へ』では黒木華さんが演じていらっしゃいます。

倫子は、『栄花物語』にも「藤原全盛時代にただ一人繁栄した源氏」だと書かれています。

ということは、その娘である彰子中宮もいわば藤原氏と源氏の血を引いており、腐るほどいる藤原氏よりも主人公が源氏である方が心に引っかかったと考えられます。

このことが『源氏物語』の歴史的展開とつながっていく。

『謎の平安前期―桓武天皇から『源氏物語』誕生までの200年』(著:榎村寛之/中公新書)

『源氏物語』は、鎌倉時代、藤原定家によって写本が整理され、その価値が定められました。しかしながら鎌倉幕府の将軍家である、源頼朝や実朝はあまり源氏物語に傾倒した痕跡は見られません。