悠子の様子がおかしくなる

でも、理紀が契約に反し、基との人工授精予定日の数日前に複数の男性と関係を持ったことを悠子に打ち明けるあたりから、悠子の様子がおかしくなる。妊娠した子どもが基の子かわからないから、中絶して人工授精をやり直すと言う理紀に対し、自分が育てるから中絶だけはするな、基には内緒にしておこう、と言い出すのだ。

基に内緒にするなんて、無理があるにも程がある。成長と同時に顔が似ていなかったりして、遺伝子検査でもされれば一発でバレる。中絶期限は迫るのに、悠子は中絶だけはダメ、産んで、と頑なだ。

しかし悠子は、結局自分だけで抱えられない、と基に子どもの父親が誰だかわからないという事実をあっさり告げてしまうのだ。困惑する基に対して、

「私たちの都合で命を宿らせたのよ」
「ぜんぶあなたが招いたこと」

と基を責め立て、
「見殺しにしても平気なの」

と中絶しないことを迫る。悠子は「不育症」で、何回も基との子どもを中絶した経験があるのだ。

いや、父親が誰だかわからない状況にしたのは完全に理紀のせいだけど……と思わずにはいられない。絶対に中絶させないことにこだわる悠子だが、本当の母親が育てた方がいいからと、自分は育てないと言い出す。(草桶夫婦は代理母出産計画のため、便宜上離婚し、基は理紀と婚姻届けを出し、夫婦関係にある)