倉田保昭さんの写真
(撮影◎本社 奥西義和)
「ブルース・リーを知る男」としても有名で、ジャッキー・チェンとも親交があり、1970年代から香港映画で俳優として活躍していた倉田保昭さん。日本では『Gメン'75』(TBS)の草野刑事として記憶している人も多いのでは。今年出演作『帰ってきたドラゴン』が50年ぶりに上演されるにあたって、78歳にして現役の倉田さんがアクション俳優になるまでの道のりを聞きました。(構成◎上田恵子 撮影◎本社 奥西義和)

50年ぶり上映の香港映画『帰って来たドラゴン』

僕が出演した香港映画『帰って来たドラゴン』(1974年公開)が、このたび「2Kリマスター完全版」として上映されることになりました。まさか50年もたって再度上映されるとは思っていなかっただけに、感慨もひとしおです。

僕はこれまで、およそ120本近くの海外映画に出演してきました。なかでもこの映画は、もっとも撮影がキツかった記憶がある作品です。

当時はCGもワイヤーも無い時代。跳べと言われたら自力で跳ぶしかなく、倒れろと言われたらその場で倒れるしかない。特に『帰って来たドラゴン』の監督は引きで撮るのが好きな人だったため、隅から隅まで全部映ってしまう。おかげで一切のごまかしが効かず、苦労しました。(笑)

撮影に2ヵ月以上、そのうちアクションシーンだけで1ヵ月。当時の香港映画は劇中の7割がアクションでしたから、体力的にも大変でした。

もうひとつ大変だったのが台本がないことです。監督だけが内容を把握していて、役者には当日「はい、今日のぶんです」とプリントされたものが渡される。撮影直前に「今日はこういうシーンがあるのか」と知るのですから、役作りや事前の準備は一切できません。

理由は情報漏洩を防ぐため。企画が盗まれて他社に先に撮影されないよう、そのようなシステムがとられていたのです。